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無双神伝英信流 大石神影流 渋川一流 ・・・ 道標(みちしるべ)

無雙神傳英信流抜刀兵法、大石神影流剣術、澁川一流柔術を貫汪館で稽古する人のために

完全相伝と不完全相伝

貫汪館

 武術 (古武道)において近年とくに家元、宗家という言葉が用いられるようになってきましたが、貫汪館ではそのような言葉は一切排除しています。間違った歴史認識が武術(古武道)でも一般的になってきていますので、長くなりますが、この理由を説明してまいります。
 歴史的に見て、古武道の世界に家元、宗家という言葉を用いて自分のみがその流派の唯一絶対者であると言うような風潮が現れたのは主に戦後のことで、それ以前はごく一部を除いて、武術(古武道)を芸能の世界に比するようなことはほとんど行われませんでした。
日本の芸道の伝授方式について論述された不朽の名著に西山松之助先生の『家元の研究』があります。
 このなかで、西山先生は師が弟子に秘儀・秘伝を皆伝するのみならず、弟子自らがその弟子に秘儀・秘伝を相伝する権利を相伝する権利までを与える場合、これを完全相伝という。それに対して家元が最終相伝権を独占し、弟子には一代相伝あるいはそれ以下の限定的な相伝しか許さず、弟子は末端弟子の実技指導について家元を代行する中間教授機関、つまり名取りとなり名取りを家元の家父長的権力の拡大再生産機構として用いる場合を不完全相伝と分類されています。
 そして前者の場合には家元制度は存在せず、後者の場合に家元制度が存在するのであるとされています。
 武術の場合にはどうなのでしょうか。結論から言えば武術の場合には家元制度は存在しませんでした。西山先生はこのように述べられています。
「武術流派は、これまでにもしばしば述べたように、完全相伝形式によらねばならない本来的性格をもっていた。わざの絶対的優位が、そのわざを伝承する最有力条件であったから「血のみち」は教学理論の伝統に優先するとうそぶいて、法主の座に君臨しておられるような、そういう世界ではなかった。事実、武術にあっては、全ての流派において、その秘術を皆伝するに当って、あらゆる一切の権威をも相伝したのであった。このため被伝授者は、伝授を与えられた瞬間において、みずからその権威の当体あるいは象徴となり変わるのである。世襲的な権威の家では、権威は永久にその家において連続しているのであるが、武術諸流では家において連続しない。非連続の連続という形式をとるわけである。そのことは、武術諸流派における秘技相伝書を二つ三つ比較してみれば一目瞭然である。・・・中略・・・つまり上泉伊勢守には多数の優秀な剣士がその門下に集まっていて、多くの人々が免許皆伝の印可を与えられたが、この印可を与えられた人々は、同時にみずから他の人々に向かって免許皆伝の印可を与える特権をも与えられたわけである。したがってこの門下から輩出した多数の高弟はみずからまた多くの免許皆伝の印可を発行した。そのため数代後の末端における兵法の相伝者たる権威の象徴は、きわめて多数に及び、それぞれ流系の正統譜は歴然としていて、上泉に発したものであっても、それはいずれも各個独立した兵法者として独歩したのであった。」
 つまり武術においては芸道のようにこの流派の唯一絶対の正統の家元は誰々であるという事は、ありえなかったわけです。
 西山先生は世襲の小笠原流について、このように述べられています。
「本来勝負を主眼とする武技の世界にあっては、何流であれ、負けることは同時に生命をたたれるのであるから、負けたのではその権威を保持し得ないのは自明のことである。小笠原家の代々が、いかにすぐれた武人たちの連続であったにしても、弓馬の法において、その勝負によって家の権威が問われたとしたならば、この家が代々世襲的にゆるぎない王座に君臨することはありえなかったであろう。・・・中略・・・別言すれば勝ち負けが、同時に生命に関係することもなく、また家の権威にも直接的には関わることもない。そのような性格の弓や馬のわざ、つまりそれは、貴族文化としての騎射の芸能が早く室町初期に成立したからだといえよう。このような性格、すなわち遊芸としての弓馬の法に関する権威の家として、小笠原家はその家元となり、代々これを世襲することとなったのであった。」
 貫汪館で皆さんが稽古されている無双神伝英信流も渋川一流も流祖代々、遊芸ではありませんし、家元制度、宗家制度は存在しませでした。今後も貫汪館において遊芸化させ、家元制度・宗家制度と言ったものを新たに作り出すつもりもありません。
 現代は武術を持って人と勝負する時代ではありませんが、貫汪館にあっては見栄えをもとめず、花を作らず、権威をこしらえることなく、真摯に武術を追及していきたいと思っています。
 西山松之助先生の『家元の研究』は西山松之助著作集第1巻(s.57.6.28/吉川弘文館)に収められています。大きな図書館で閲覧できますので、ご一読ください。
  1. 2006/10/13(金) 00:40:47|
  2. 武道史

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貫汪館館長(無雙神傳英信流 大石神影流 澁川一流)

Author:貫汪館館長(無雙神傳英信流 大石神影流 澁川一流)
無雙神傳英信流抜刀兵法、大石神影流剣術、澁川一流柔術 貫汪館の道標へようこそ!
連絡先は貫汪館ホームページで御確認ください。

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