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無双神伝英信流 大石神影流 渋川一流 ・・・ 道標(みちしるべ)

無雙神傳英信流抜刀兵法、大石神影流剣術、澁川一流柔術を貫汪館で稽古する人のために

練兵館 齋藤弥九郎の野試合について 4

Ⅴ 野試合成立の背景
1.短兵接戦
 『江戸の兵学思想』13)に「一般的に古来の兵家者流には、「夷の戦略」-西洋兵法―の長所でもあり、短所でもあるものは火砲第一主義であるとする抜きがたい先入観があった。」と記されているように当時の日本人には西洋人は遠方からの砲撃・射撃には長じているが、白兵戦には長じていないという考えがあった。したがって攘夷のための戦法として「短兵接戦主義」が考えられた。
山鹿素水は嘉永元年(1853)の『海備全策 巻之三』14)「海岸戌兵之大意」において次のように述べている。
「夷ノ上陸スル寸ニ及ひ会戦セントスルニハ 雙輪車ニ架シタル百目二百目ヲ先途ニ進メ 足軽兵士其跡ニツヽキ 十挺廿挺ノ大礟ヲ込替々々間断ナク打立々々疾進ンテ神速ニ彼カ手元へ入ルヲ要トスヘシ ステニ其間十間内外ニ詰ルスンハ大礟ヲ打出シカタケレハ足軽士の小筒ヲ以テ一放ナシテ烟ノ中ヨリ撃入スルを要トスヘシ 手元ニサヘ詰レハ必勝更ニ疑ナシト雖 容易ニ撃入スルノ図マテ詰ルコトアタワスシテ打弊サレン 故ニ我ヨリ発スル車臺ノ筒モ敵ヲ打弊スヨリハ我敷ヲ詰ル迄ノ楯ノ心ニテ如何ニモ烈シク打立ルヲ要トシ彼ヲ打弊スヲ主ト思フヘカラス 吾如何ニ進ントスルトモ彼カ弾丸ノ烈シク来ル前エ偶然トハ進カタシ 此炮ヲ以テ打立ルヲ競ヒトシ我士卒ノ打弊サルヽヲ乗踏越無二無三ニ手詰ニ至ランニハ 打弊サレタル兵寡クモステニ彼カ隊中ニ撃入テハ吾一人ハ彼カ十人ニ敵スヘシ 此時ハ槍ニ練達ナシタラン者ハ元ヨリ槍ニテ突立ヘシト雖サマテ其業ノ熟セサルハ刀ヲ震ツテ縦横ニ切立捲リ立ルニ利多カラン 足軽ノ炮ヲ取廻シ得サルニハ長巻ヲ持セテ切立突立サスルニ利アラン 長巻ナラスンハ刀ヲ震ツテ撃入サスヘシ 一陣如此撃入タランビハ其余ハ乗シテ撃入ニ易カルヘシ 然ラスシテ足軽長柄兵士の三兵ヲ次第ノ如ク闘ワセンコトハ決シテナルヘキコトニハ非サル也
我邦中古ノ戦風ハ手詰ヲ専ラニナスカ故ニ懸リ口ヨリシテ彼我ノ虚実ヲ転シ寄正ノ運転等手強キ中ニモ高上ノ術モ多シト雖 夷ノ戦略ニ至テハ更ニ此味ヒナシ 彼ハ遠隔テ大小ノ炮ヲ以テ打合マテナレハ 先頭ノ上ニ於テハ猛烈ナル勝負アルコトナク至テ手弱シ 其猛烈トシテ恐懼スル所以ノモノハ炮ノミナリ ステニ手詰ニ至テハ炮ノ如モ施スコトアタワス戎衣モ粧ワス 鈍刃ヲ執テ闘フナレハ其兵虎ノ如ク熊ノ如シト云モ更ニ恐懼スルニ足ラス 我兵士気衰弱シテ中古ニ比スレハ甚タ弱シト云モ 堅甲ヲマトヒ利鋭ノ刀槍ヲ震ヒ一刀ニシテ人体ヲ両断ニナスノ猛烈ナル彼何ソ当ルコトヲ得ン 隊中ニ撃入スル寸ニ当ラハ実ニ一人百人ニ敵スルニ足ヘシ」
文中に「彼ハ遠隔テ大小ノ炮ヲ以テ打合マテナレハ」とあるように、山鹿素水は西洋は白兵戦を行なわないという発想があり、したがって短兵接戦を行なえば「隊中ニ撃入スル寸ニ当ラハ実ニ一人百人ニ敵スルニ足ヘシ」という結果となると考えている。これは「2.長州藩の神器陣について」で述べる長州藩の神器陣の考え方と基本的に同じものである。
 嘉永4年(1851)に山鹿素水に入門した吉田松陰は安政5年(1858)の著作である『西洋歩兵論』15)に次のように述べている。
「・・・西洋人、歩兵を以て軍の骨子となす、是れ孫子の所謂正なり。其の他騎兵・砲兵等は所謂奇なり。余因って思ふ、正は西洋歩兵の節制をとるに如かず、奇は本邦固有の短兵接戦を用いるに如かずと。扠其の正を以て合うと云ふは敵にも正あれば我もまた正を用ひて、相対して敵と抗衡する心なり。・・・是正を以て合ふのことにして、敗れざるの道なり。戦勝の道に至りては、全く奇を以て勝つの上にあることなり、己に正を以て合ふ上は、精兵の弓銃士又短兵隊等或は聚まり、或は五人七人も合し、或は十五二十も合し、敵の横を衝き、後を破り、又其の色めくに乗じては短兵三五十も一斉に衝き掛り、或は大砲を用ひて敵の中軍後勁を粉砕し抔する類、奇を以て勝つの法なり。今余が西洋歩兵を学ぶことを論ずるを以て、我が國固有の得手を失はんことを患ふるものあり、大に是れ事を解せざるものと云ふべし。余が西洋歩兵を用ふるは即ち我が國固有の得手を自在に使用せんとの手段なり」
吉田松陰は山鹿素水のように銃砲を用いるのは短兵接戦に持ち込むためだという安直な考えは持っていないものの、敵の歩兵に対して歩兵を用い敵と対抗した上で、奇兵として短兵接戦にもちこんで勝利を得ることを考えている。山鹿素水ほどではないにしても短兵接戦は我が国の優れた戦法であるという考え方から離れてはいない。



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 9月15日(土)午後4時より午後8時まで福岡県久留米市の久留米市北野コスモス館(久留米市北野町高良1706番地1)交流ホールで無雙神傳英信流抜刀兵法の指導を行います。興味のある方は久留米道場の連絡先へご連絡ください。


 9月23日(日)に貫汪館居合講習会を行います。今回は澁川一流の居合・鎖鎌・半棒の稽古をいたします。御案内を貫汪館H.Pの無雙神傳英信流抜刀兵法 稽古のページに載ておりますので御覧の上どなたでも御参加ください。

 無双神伝英信流抜刀兵法 久留米道場の稽古は毎週水曜日 荘島体育館 軽運動室 19時~21時です。興味のある方は 無双神伝英信流抜刀兵法 久留米道場のホームページ(←クリックしてください)の《稽古日時・場所》に記してある連絡先からご連絡ください。
  1. 2012/09/14(金) 21:25:30|
  2. 武道史

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