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無双神伝英信流 大石神影流 渋川一流 ・・・ 道標(みちしるべ)

無雙神傳英信流抜刀兵法、大石神影流剣術、澁川一流柔術を貫汪館で稽古する人のために

岩国藩の武術(天保八年)

 土佐の樋口真吉が大石進のもとで修行した後、土佐への帰途各地で試合をしていますが、その中に当時の岩国の様子が記されていますので長くなりますが引用します。それほど難しい文章ではないのでお読みください。

天保8年12月
十日、雪、今市道傍義奴六松碑有、文政紀元戌寅秋九月三丘山田時文運平撰、□府矢埜允一蔵書と有、文字難見定、夫より高森の町ヲ通、玖珂ヲ経、此跡ニ西熊毛郡、東玖珂郡との境あり、岩田川、岩国着、里数七里、岩国ニ至る處山あり、一翁ニ遇、山縣先生ヲ問、則委教くれる、山縣氏ヲ訪、先生酒ヲ出、後川野屋平左衛門ニ行て宿、山縣氏門人四五輩出テ挨拶す、また米原新三郎案内して湯屋ニ行、山縣先生弟宿ニ来、同道ニて先生宅へ行、稽古人退散、宿ニ帰ル、暫時ニして佐々木与助酒肴ヲ齎来る、八ツ時山縣氏へ行、則人数貮拾人、木流槍術稽古有之、桑原氏三人相手、尤素槍(二間半)、山縣氏門人入身なり、木流他流試合せず、山縣門人國元への傳書ヲ余等ニ託、黄昏稽古畢、米原新三郎宿ニ来、談話二更ニ過、家中有鑓

 樋口真吉は12月10日に岩国に到着し、木流槍術の山縣先生を訪ねます。岩国の高木流は所謂互角の試合(相面試合)をしておらず、「入身」といわれる変則的な試合稽古のみをしていたようです。「入身」とは片方が長い槍を持ち、もう片方が短い槍を持ちます。短い槍を持ったほうが長い槍を持ったものの手許に入っていく稽古で、当然の事ですが長い槍を持った方は、入られぬように短い槍を持ったものを突きます。江戸時代の後期に互角の試合がほとんどの流派で行われるようになるまでは、このような「入身」試合が行われていました。
 「山縣門人國元への傳書ヲ余等ニ託」とありますが、高木流槍術は高木流體術とともに土佐で行われており、後に岩国の高木流を学びに行ったものがいますから、文脈からははっきり分かりませんが、土佐の人にあったのか土佐の人あての伝書をたくされたのではないかと思います。岩国で学んだ人物は後に柳河の大嶋流師範加藤善右衛門の下でも学んでいます。
 次の記事は12日になっていますが、10日の記事のところに11日分まで纏めて書いているのではないかと思います。


十二日、早朝、與助来る、新三郎の弟、余等ヲ誘引して米原氏ニ行、暫有て諸士数十輩入来る、其後小川一摩、備前修行者、馬場晴二同道ニて来る、白砂ニテ試合す、第一番馬場晴二神道無疆流也、予相手、第二番小川一摩(大兵)難波一甫流、桑原相手、三番一摩と余、四番晴二と余と再なり、五番一摩と余、槍試合、一摩貮間一尺之槍ニ大鎌附ヲ遣、次六番一旨流(管槍)某予と也、七番小川氏と剣桑原再也、八番小川門人某と余、剣術、九番小川門人と桑原立合畢、委ク姓名修行帖ニ識ス、衆皆退、山縣先生僕等三人跡ニ止る、飯出、帰宿、諸士追々入来、時三戸某余ニ對面申度由佐々木与助ヲ以申来ル、早速遇之、三戸氏愛洲新陰家也、師祖図景ヲ予ニ□、因テ記して与之、三戸家傳来之景図識置、夕陽岩国ヲ発、山縣両先生(老先生杖倚来)ヲ初数送テ渡頭ニ至、過錦帯橋(橋穹窿然)ヲ、小川氏の宅ニ立寄、晴二稽古ヲ舎テ出ツ、余カ荷ヲ叩テ曰、余明年剣技ヲ磋て足下の国ニ行ント、夫より新港ニ着、岩国ヨリ五拾丁、夜五ツ時發舟、
行尽晴中寓旅郵、衆人擁火咸他州
二更倩艇出新港、漏鼓無端發渡頭
海上五里にして鶏鳴宮嶋ニ着、則白銀屋与兵衛ヲ起し宿


 12月12日は剱術は神道無疆流・難波一甫流と試合をし、槍術は難波一甫流・一旨流(管槍)と試合をしています。槍術では難波一甫流と一旨流(管槍)は入身ではなく互角の試合をしていたという事が分かります。
 難波一甫流は広島の農村部では柔術が主体となり、槍術も枕槍といって室内で用いるような短い槍を稽古しており、目録にも枕槍という種目しか記されていません。剱術も形稽古が中心であったのではないかと思います。
 沼田にのこる絵伝書では長い鎌槍と素槍を用いているので不思議に思っていましたが、本来広島でも長い槍も用いていたのかもしれません。また岩国では難波一甫流が「一摩貮間一尺之槍ニ大鎌附ヲ遣」と鎌槍を用いている事が記されていますが、広島の難波一甫流の伝系には広島藩に宝蔵院槍術を伝えた人物と思われる名前が入っていますので、難波一甫流には宝蔵院の槍が取り入られていたのではないかという私の推測も正しいのではないかと思います。
 いつか岩国の武術史の調査もしてみたいと思っていますが、なかなか時間がありません。
  
 無双神伝英信流抜刀兵法 久留米道場の稽古は毎週水曜日 城南中学校剣道場 19時~20時45分です。興味のある方は 無雙神傳英信流抜刀兵法 久留米道場の《稽古日時・場所》に記してある連絡先からご連絡ください。
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  1. 2010/11/14(日) 21:25:29|
  2. 武道史

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